味方の打線の援護の無い投手は、本当に不幸か?(川尻、ガルベスの文句)
昔から、先発投手は、味方の打線の援護についての不公平について口にしていました。古くは、400勝投手の金田選手が、「自分は弱い国鉄スワローズで400勝したのだから、値打ちが違う」と主張していました。この金田投手の主張はそのとおりだと思います。
また、阪神時代の川尻投手は、阪神打線が貧弱だったことを背景に、「自分の勝ち星は、強いチームならもっと多いはずだ」と主張して年俸交渉しました。このように、プロの先発投手は味方の打線の援護を強く期待しているものです。
ここで、「では、なぜ味方の打線の援護を期待するの?」と言われれば、「その方が勝ち星が楽につくから」が明白な理由でしょう。
現在、先発投手の勝ち星の定義は「5回まで投球して、味方がリードしていた場合、最終的に、その後リードを保って試合が終了した場合。」です。この定義を前提にすれば、早く味方の打線の援護が、それも出来るだけ多く、期待したいのも無理はありません。
しかし、一方で、仮に先発投手の勝ち星の定義を「仮に3回までに5点以上リードした場合には、勝ち星はつかないこととする」としたらどうでしょうか。初回に味方の打線が爆発して10点とってしまったら、先発投手は喜ぶでしょうか。「もうちょっと少なくてもいいよ」と思うのが、自然ではないでしょうか。
つまり、先発投手が「打線の援護が、なるべく早い段階で、出来るだけ多く欲しい」と考えるのは、「勝ち星の定義」に負うところが大きいわけです。同様の問題は、セーブの定義にもありますよね。セーブのつかない場面で登板した抑え投手は「無駄働き」の感覚があるのではないでしょうか。このように、選手の評価基準が歪んだものであれば、選手の意識にも歪みが生じるものなのです。
さて、真面目に考えてみれば、投手は、チームの勝利を達成するために投球するのですから、味方の得点に対して喜ぶのは基本的に自然です。しかし一方で、打線が爆発してチームが勝った場合には、勝利に貢献したのはあくまで打線であって、投手ではありません。昔、藤田太陽選手が阪神に入団したときに、その頃阪神は弱体でしたが、「自分の投球でチームを勝たせるんだ」とコメントしていました。これは、投手としては、「自分が勝利に貢献したい」のであり、あんまり打線が打ちすぎるのも張り合いが無いのではないでしょうか。「勝ち星」という基準があるから、とにかくチームの打線の援護を期待するのは、自然に見えて、「歪み」を含んでいるとはいえないでしょうか。
これがさらに顕著なケースとして、昔、巨人のガルベス投手が、あんまりチームの打線の援護が無いものだから、ふてくされてしまったことがありました。これはまさに「いくら頑張っても勝ち星がつかない」からなのですが、考えてみれば、そのような場合こそ、投手は燃えるべきなのではないでしょうか。このような意識を「勝ち星」という概念は減退させているような気がします。
以上のような考察を、勝率案で検討してみましょう。
1回表に1点取られて、そのあと2回から9回まで完封し、1失点で完投した投手について考えてみたいと思います。
検討を分かりやすくするために、味方の打線も、1回裏のみ得点して、そのあとずっと0点だったとします。そこで、以下のような場合を考えてみましょう。
(ケース1)
A 100 000 000 = 0
B 000 000 000 = 1
ケース1は、いわゆるスミ1です。投手が最もかわいそうだとみなされるケースですね。今年も、和田と松坂の投げあいで、似たようなことがありました。
この場合、勝ち星としてはBチームの投手は1敗です。しかし、彼の貢献はむしろプラスで、勝てなかったのは打線の責任であるというのが、我々の実感ではないでしょうか。
この場合、Bチームの投手の貢献値はプラス37.1%になります。初回の失点はマイナス4.6%ですが、その後は毎イニング5%前後のプラスがあります。つまり、彼は貯金0.75プラス程度の貢献をしているのですが、打線が貯金1.75マイナス分の体たらくだったので、チームは貯金マイナス1になってしまったわけです。これは実感に近い数字であると思います。
普通、チームが勝利した場合、チーム全体の貢献値の合計はプラス50%であり、投手と打線が同程度の貢献をしたと考えられる場合、両者の貢献はそれぞれ25%程度になるはずです。すると、先に先制点を奪われ、Aチームの投手は負けたにもかかわらず、標準的な勝ち投手よりも貢献は大きかった、つまり胸を張って良いことになります。
(ケース2)
A 100 000 000 = 0
B 200 000 00X = 1
ケース2は、Bが最も僅少差で勝ったケースです。チームも勝つためには最小限の援護しかしていません。
この場合、我々の実感としては、「打線の援護が十分ではないのに、Bの投手は良く頑張った。」ですね。
この場合、Bチームの投手の貢献値はプラス67.7%になります。これはケース1と比較して相当大きな数字です。つまり、最初から2回以降はゼロに抑える自身のある投手にとっても、この2点は有難いもの(当たり前ですが)、ということになります。
(ケース3)
A 100 000 000 = 0
B 400 000 00X = 1
ケース3は、Bがほどほど得点した場合に勝ったケースです。最近の傾向からすれば、少し少なめですかね。
この場合、我々の実感としては、「Bの投手は良く投げ、危なげなく勝った。」ですね。
この場合、Bチームの投手の貢献値はプラス33.9%になります。ということは、打線の貢献はプラス16.1%ですね。まあまあの配分ではないでしょうか。打線は標準的な援護をする一方、投手は標準以上に投げたのですから、これくらいの配分です。
これはケース1と比較して、ケース1を下回る数字です。極端な話、「投げがいがあるか?」という観点からは、投手にとって、4点も取ってくれるより、1点も取ってくれないほうがexcitingということになります。
(ケース4)
A 100 000 000 = 0
B 900 000 00X = 1
ケース4は、Bの打線が爆発しています。我々の実感としては、「Bの投手は良く投げたが、主な勝因は打線の爆発」ですね。
この場合、Bチームの投手の貢献値はプラス0.5%になります。打線の貢献がプラス49.5%です。初回の失点は相変わらずマイナス4.6%なのですが(ケース1からケース4まで、これは同じ)、その後、チームが試合を決めてしまったせいで、Bチームの投手としては、「名誉挽回のチャンスを奪われてしまった」格好になります。
以上のような考察をすれば、勝ち星としては、ケース1のみ負け、後は勝ちになり、防御率としてはどれも同じなのですが、貢献値では実に様々なバリーエーションがあることになります。
投手の基本としては、チームが勝利するために、重要な場面ほど気合を入れるのは当然だと考えれば、上記のような結論も自然なのではないでしょうか。
2001年1月30日 スポニチアネックス
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川尻 5時間で終戦
「ある程度、自分の中で納得できたからサインしました。長い交渉は疲れますね」と川尻。昨年12月5日の初交渉から、代理人の小野博郷弁護士と(1)過去6シーズンにさかのぼっての実績の再評価(2)チーム勝利数に対する占有率など弱いチームでの勝ち星の意味の見直し(3)代理人だけの交渉などを求めてきた。金額的には要求は1億4000万円。当初の球団提示8000万円との大きな溝を出来高で埋める結果となったが、最後に川尻は満足げな笑顔を見せた。
1999.09.30
ガルベス12敗 長嶋監督男にできず
横浜3−1巨人
巨人ガルベスが、マウンド上でニヤニヤと笑う。もちろん、余裕の笑みではない。いつものようなイライラした雰囲気でもない。「あきらめ」のような笑顔だった。1回裏、先頭の石井琢に二塁打を浴び、鈴木尚の適時二塁打で先制点を奪われた。さらに駒田の内野安打で1点を追加されると、ガルベスは首を左右に振る。今季、このシーンを何度見たことか。このしぐさから、反撃ムードが断ち切れたことが何度あったか。前後半ともに開幕投手を任された男は、最後まで変わることはなかった。2回以降は立ち直り、6回までを1失点に抑えた。だが、打線の援護がなく、今季12敗目を喫した。試合後、長嶋監督は「ガルベスは久しぶりに素晴らしい投球をしたが、打てなさすぎた」と、敗戦投手をかばった。いまだ9勝と2ケタに届かず、長嶋監督が「本当の勝負」と位置づけた9月に勝ち星なし。開幕前「監督を男にする」と豪語したが、投手陣の柱にはなれなかった。勝てないだけではない。審判批判、打線非難と、次々に問題発言をして、ムードを壊した。この日も、ガルベスは「コンディション? オレのか? 打線のか?」と、打線を非難。「いつまでアンラッキーが続くのか。もう、終わってしまうよ」。新人ながら、疲労した体にムチをうって投げ続けた上原と、あまりに対照的。来季の契約は未定だが、日本の他球団が食指を動かしていることもあり、残留の方向。長嶋監督は、来年もガルベスに振り回されるのだろうか。