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局面値とは

 

 局面値とは、試合の各局面の重要性を測る指標です。

 

 例えば、1回表無死無走者(つまりプレーボールの段階)と、同点、9回表無死無走者のケースでは、どのくらい重要性に違いがあるのでしょうか。

 

 勝率案では、このような重要性を測る指標として、「当該局面において、次の各プレーにおけるチームの勝率の変動分の標準偏差」を利用しています。要すれば、次の各プレーの貢献値の絶対値の平均値のようなものです。この標準偏差を「標準変動値」と呼んでいます。

 例えば、ある局面のチームの勝率をAとし、次に生じうる各局面をB1,B2,B3,Bnとし、各局面の生じる確率をそれぞれP1,P2,P3,Pnとすると、

P1+P2+P3++Pn=1P1(B1-A)+ P2(B2-A)+ P3(B3-A)++ Pn(Bn-A)=0となりますが、

この局面の標準変動値は、

(P1(B1-A)^2+ P2(B2-A)^2+ P3(B3-A)^2++ Pn(Bn-A)^2)^(1/2) ←(”^”は乗)

で計算されます。

 

 この各局面の標準変動値を、1回表無死無走者の局面での標準変動値で除したものが、局面値になります。

 結局、局面値とは、各局面が1回表無死無走者の局面に比べて、チームの勝利に与える影響という観点から、何倍重要性を有するか?つまり何打席分の価値になるのか?ということを示す指標であるといえます。

 

(従来は、局面値を、「当該局面に比し、アウトカウントが一つ増えた局面(2死からは、スリーアウトになった局面)において、減少するチームの勝利確率の絶対値」と定義していましたが、併殺打や進塁打が多く生じうる局面では、上記の定義が性格に、局面の重要性を反映しない可能性があることから、より正確な指標として、上記の新定義としました。UZUさんの発案です。)

 

冒頭に指摘したケースについて考えると、

9回表同点無死無走者のチームの局面値=2.86ですから、これは、1回表無死無走者に比べて3倍弱の重要性を有する局面であるといえます。

一方、9回表5点ビハインド、無死無走者のチームの局面値=0.22ですから、これは、1回表無死無走者に比べて1/4以下の重要性を有する局面であるといえます。

 

 

 勝率案における貢献値は、標準的な選手においてプラスマイナスゼロが達成されるように設定されています。これは、どのような局面においても当てはまります。したがって、例えば優秀な選手がいて、一定の確率でプラスがマイナスを上回る場合には、出場回数が多いほど、また、出場した局面の勝利に対する重要性が高いほど、プラスの幅が大きくなることになります。

 

  このように、局面値には2つの意義が存在します。それは、

 

@ 各局面の、試合の勝敗を決する重要性を示す指標、

 

A @から転じ、各選手の出場機会における局面値の累計値は、勝率案における「出場量」(投手においては投球回数、打者においては打席数に該当するもの)を示す指標。

 

ということになります。

 

 これにより、例えば、僅差の場面に登板する抑え投手は、投球回数は少なくても局面値が高くなりますし、また、同じ打席数でも、クリーンアップはそれ以外の打者に比べて、局面値の累計が大きくなります。

 また、局面値は、当該局面で実際に選手が本塁打を打ったり、三振をしたりという結果に影響を受けない、局面毎の重要性の基準になります。

 

 また、「エースと4番はどちらが重要か?」といった問題提起がなされてきましたが、基本的には、最も優秀な選手に、最も局面値の累計が大きくなるようにするのが、勝利への近道と言えます。

 

 貢献値は選手の各プレーを評価するのに重要な数値ですが、上記の通り、局面値は、各選手のプレー前に、当該局面がどのくらい重要なのかを示す指標ですから、試合を観戦する際、こまめにチェックすると有意義であると考えられます。

 

 なお、試合の各局面における局面値の各局面別一覧表を掲げます。ご利用ください。

 

 

(補論)貢献値のプラス分とマイナス分の絶対値の合計と局面値の関係について

 

 

 

 「各選手が、どれくらい重要な場面でプレーをしてきたか。」の基準として、「単純に貢献値のプラス分と、マイナス分の絶対値を合計すればよい、そして、貢献率は、「貢献値のプラス分/(貢献率のプラス分+貢献率のマイナス分の絶対値)」でよいではないか。」と考えられる方がいるかもしれません。

 

 これは一理ある考え方です。例えば、投手で147敗の選手がいた場合に、「21試合に出場し、勝率67分」と言えば良いのと似ています。

 

  それでは、なぜわざわざ、「当該局面において、次の各プレーにおけるチームの勝率の変動分の標準偏差」というような面倒な概念を局面値としたのでしょうか?

 

 これは、以下のような事情によります。

 

 投手と打者は、貢献値のプラス分とマイナス分は、標準的な選手において大体バランスするのですが、投手が各局面で打者を抑える可能性は5割を超える(出塁率は5割以下)ので、投手が各局面でプラスの貢献値を獲得する可能性は、打者より高いのです。そのかわり、投手がプラスの貢献値を獲得した場合のプラスの幅と、打者がプラスの貢献値を獲得した場合のプラス幅を比較すると、後者の方が前者より大きいことになります。

 

  例えば、ある投手と打者が100回対戦するとすると、投手が600回抑えて、打者が400回プラスを獲得(出塁や、犠牲フライなど)するとします。この場合、両者ともプラスとマイナスがバランスするとすれば、投手が打者を抑えた1回あたりのプラス幅と打者が出塁等した、1回あたりのプラス幅の比は4:6になります。仮にそれぞれ、2%3%としましょう。

 

 この場合、投手は貢献値のプラスの合計は2%×600=1200%、マイナスの合計も-3×400=1200%でバランスします。同様に、打者のプラスマイナスもバランスします。したがって、上記のように、各選手の出場機会の重要性の度合いの基準として、1200%+1200%=2400%を利用し、貢献率は1200/2400=50%と言っても問題ありません、

 

  しかし、投手や打者が標準的な選手ではなく、プラスがマイナスを大きく上回ったり、逆に下回ったりした場合には、上記のようなやり方には「歪み」が生じます。

 

  例えば、上記の場合で、投手が800回抑えたとしましょう。この場合、投手のプラス分は2%×800=1600%、マイナス分は3%×200=600%です。つまり、両者の絶対値の合計は2200%となります。これは、プラスとマイナスがバランスした場合の2400%より小さいです。

 

 次に、打者が600回出塁したとしましょう。この場合打者の貢献値のプラス分は3%×600=1800%、マイナス分は2%×400=800%となり、合計は2600%です。これは、プラスとマイナスがバランスした場合の2400%より大きいです。

 

  しかし、本来、局面の重要性は、投手や打者がプレーした結果如何に関わらず、局面ごとに客観的に決定されるべき数字でなければなりません。上記のように、投手が活躍したか、打者が活躍したか、プレーの結果により、数字が変わるのでは、指標として適切とはいえません。

 

 つまり、「貢献値のプラス分とマイナス分の絶対値の和」は、「投手がプラスの貢献値を獲得した場合のプラスの幅と、打者がプラスの貢献値を獲得した場合のプラス幅を比較すると、後者の方が前者より大きい」ことから、プラス分がマイナス分を上回る投手においては小さい数字になり、逆にプラス分がマイナス分を上回る打者においては大きな数字になる。ということです。したがって、仮に「貢献値のプラス分とマイナス分の絶対値の和」を「出場機会の指標」として利用すれば、例えば松井と松坂を比較する場合に、松井の出場機会の方が、松坂の出場機会より大きく見えがちになってしまいます。

 

  上記のような「歪み」を排除するために、「局面値」には、「当該局面において、次の各プレーにおけるチームの勝率の変動分の標準偏差」という概念を利用したのです。これであれば、選手が活躍したか、いなかったか、プレーの結果如何に関わらず、局面の重要性を客観的に評価が出来、松井と松坂の出場機会の重要性の比較を行うことも出来るようになります。