優勝貢献値(優勝案)
勝率案や貢献値を利用した、もう一つ別の評価基準があります。それは、優勝貢献値(優勝案)です。
この評価基準は、名前の通り、チームの優勝確率の変動分を、選手の評価に利用しようとするものです。
この計算によれば、あるチームが優勝するために重要性の高い試合において活躍すれば、それだけ評価が高くなります。
例えば、甲子園では、決勝戦の重要性は、1回戦より高いと考えるのが常識でしょう(人によっては、1回負ければ終わりという観点からは同じ重要性と言うでしょうが。)。また、日本シリーズのような場合でも、初戦と第7戦の重要性は異なると考えるべきです。
それでは、それぞれの試合の重要性はどのように考えるべきでしょうか。また、これをどのように勝率案と組み合わせるのでしょうか。
これは、以下のように考えます。
@ ある試合において、チームの残り各試合における勝利確率をX%(通常は50%)と仮定して、チームがある試合に勝った場合のチームの優勝確率(A)と負けた場合の優勝確率(B)を計算する。
A 勝率案における貢献値は、チームが当該試合における勝利確率の変動分であるが、あるプレー前のチームの勝利確率をα、プレー後のチームの勝利確率をΒとすると、当該選手の貢献値(CV)=(Β−α)である。
B @とAから、当該プレー前のチームの優勝確率はB+α×(A-B)、当該プレー後のチームの優勝確率はB+Β×(A-B)。
C 当該プレーによるチームの優勝確率の変動分は、{B+Β×(A-B)}-{ B+α×(A-B)}=(Β-α)×(A-B)=CV×(A-B)
D つまり、(勝率案における貢献値)×(当該試合に勝った場合と負けた場合のチームの優勝確率の差)により、優勝貢献値が計算できることになります。なお、「当該試合に勝った場合と負けた場合のチームの優勝確率の差」を、その試合の「優勝重要度」と呼ぶことにします。
例えば、決勝戦では勝った場合のチームの優勝確率は100%、負けた場合の優勝確率は0%なので、決勝戦の優勝重要度は100%。したがって、決勝戦の貢献値は、そのまま優勝貢献値と等しくなります。一方、準決勝で勝った場合のチームの優勝確率は50%、負けた場合の優勝確率は0%なので、準決勝の優勝重要度は50%。したがって、準決勝の貢献値に50%をかけたものが、優勝貢献値になります。
したがって、それぞれの試合の貢献値に優勝重要度を掛けたものが、優勝貢献値になります。
では、次のようなケースを考えてみましょう。
日本シリーズで、あるチームが○○●○●●○で、4勝3敗で優勝したとします。A選手、B選手は共に当該優勝チームの選手です。
A選手
第1戦 0%
第2戦 プラス10%
第3戦 プラス10%
第4戦 マイナス10%
第5戦 プラス10%
第6戦 0%
第7戦 マイナス10%
B選手
第1戦 マイナス10%
第2戦 0%
第3戦 マイナス10%
第4戦 0%
第5戦 マイナス10%
第6戦 プラス10%
第7戦 プラス10%
貢献値の合計はA選手はプラス10%、B選手はマイナス10%です。しかし、上記の場合、例えば、絶対に負けてはならないのは第7戦、比較的負けても良いのは第3戦、第5戦ですね。B選手は第7戦で活躍する一方、第3戦、第5戦で失敗してます。A選手は第3戦、第5戦で活躍していますが、チームの第7戦では足を引っ張っています。すると、優勝貢献値では、B選手の方が高いのではないか?
この場合(優勝したチームについて考えると)、
第7戦 勝った場合の優勝確率=100%、負けた場合の優勝確率=0%
⇒ 優勝重要度は100%。
第6戦 勝った場合の優勝確率=100%、負けた場合の優勝確率=50%
⇒ 優勝重要度は50%。
第5戦 勝った場合の優勝確率=100%、負けた場合の優勝確率=75%
⇒ 優勝重要度は25%。
第4戦 勝った場合の優勝確率=87.5%、負けた場合の優勝確率=50%
⇒ 優勝重要度は37.5%。
第3戦 勝った場合の優勝確率=93.75%、負けた場合の優勝確率=68.75%
⇒ 優勝重要度は25%。
第2戦 勝った場合の優勝確率=81.25%、負けた場合の優勝確率=50%
⇒ 優勝重要度は31.25%。
第1戦 勝った場合の優勝確率=65.625%、負けた場合の優勝確率=34.375%
⇒ 優勝重要度は31.25%。
(このようなシステムでは、第1戦と第2戦の重要度は等しくなります。第2戦重視・・・。という話を聞きますが、重要度が等しいなら、お互いのエースをぶつけることは避けて、第2戦終了後に1勝1敗になる可能性を高くし、シリーズを長期化させる中で情報収集を行うということだと思います。知略派、情報派の監督が好みそうな作戦ですね。)
すると、
A選手の優勝貢献値
第1戦 0%×31.25%=0%
第2戦 プラス10%×31.25%=プラス3.125%
第3戦 プラス10%×25%=プラス2.5%
第4戦 マイナス10%×37.5%=マイナス3.75%
第5戦 プラス10%×25%=プラス2.5%
第6戦 0%×50%=0%
第7戦 マイナス10%×100%=マイナス10%
合計 マイナス5.625%
B選手の優勝貢献値
第1戦 マイナス10%×31.25%=マイナス3.125%
第2戦 0%×31.25%=0%
第3戦 マイナス10%×25%=マイナス2.5%
第4戦 0%×37.5%=0%
第5戦 マイナス10%×25%=マイナス2.5%
第6戦 プラス10%×50%=プラス5%
第7戦 プラス10%×100%=プラス10%
合計 プラス6.875%
となって、B選手は、チームの優勝確率を6.875%高めた一方、A選手はチームの優勝確率を5.625%低めてしまったことになります。
さて、それでは、優勝貢献値と、勝率案における貢献値は、いずれを使用すべきなのでしょうか?
勿論優勝は重要ですが、プロ野球にも、高校野球にも優勝以外の価値があることに間違いはありません。勿論、勝ち星を挙げる以外の価値も存在するのですが。
仮に、プロの価値を
@ 優勝に貢献する
A 勝利に貢献する
B プレーの中で、プロレベルの高い技術を観客に見せる
とするなら、@からBに向かって、優勝貢献値⇒貢献値⇒実績値が妥当することになります。
いずれの価値を重視するかにより、利用する基準を変えるべきなのです。
例えば、レギュラーシーズンでも、その究極的な価値は優勝ですが、ファンは優勝を別としても、チームの勝ち負けに毎日一喜一憂しています。すると、レギュラーシーズンでは、貢献値や実績値を重視するべきでしょう。(なお、レギュラーシーズンでは正確に優勝重要度を計算することが難しい、ということもありますが。)
一方、日本シリーズのような決戦では、優勝貢献値を重視すべきでしょう。実際、第7戦までもつれた場合には、最終戦に活躍した選手がMVPを獲得するケースが多いし、それはファンのイメージにも合ったものでしょう。
ただし、近鉄と巨人の日本シリーズで、巨人が3連敗後4連勝したとき(加藤哲郎選手の「巨人は弱い」発言があったシリーズ)第4戦に香田選手が好投して、流れが変わりました。上記の重要度から言えば、当該第4戦は非常に低い(12.5%)ですが、シリーズには「流れ」がありますし、実際にはそこで、近鉄打線が緩急に弱いこと、縦の変化球に弱いことが露見したので、香田投手の貢献は後から見れば大きかったことになります。このように、優勝貢献値の数値と、シリーズでのイメージは異なる場合もあります。